不可逆性の理解の一つの到達点
プリゴジンらが「存在から発展へ」等で展開している巨視系の
時間対称性破れがintrinsicに起こるという主張に対して、
カオスマップとビリヤード系を用いて、一つの包括的ストーリーを
与えたのが著者達である。
Ruelle-Pollicott共鳴とSinai-Ruelle-Bowen測度が不可逆性に
果たす役割と、時間発展作用素が時間対称性を持つにもかかわらず、
現実的には時間発展非対称性が現れる理由(現実に用意できる
初期条件の滑らかさが原因)を、実例を持って示した功績は大きい。
特に、それまでのプリゴジンスクールのモデルは場の理論の
無限次元系であった為、時間発展演算子のユニタリー非同値の
問題があるので、著者らは有限次元系の例を示したことも功績であった。
しかしながら、トイモデルでありすぎるため現実の系にまで
拡張する動きはその後ないのが残念である。
可逆性から不可逆性を導く
著者はプリゴジンの研究室で研究していたらしい.
で,「分子的混沌」などの仮定を用いずに可逆性から不可逆性を導き出すことに成功したという.特に多重パイこね変換の手法を用いてそれを示す.単パイこねと違って,多重パイこねでは平衡状態への移行だけでなく,非平衡定常状態への以降も論ずることができる.
さて,このときのポイントとなるのは,統計力学で用いられるギブス集団において,ギブス集団の個々の状態は可逆的なのだが,そのそれぞれの状態を相空間内の点としてあらわしたときに,その点の集まりの形状が時間経過とともに不可逆的に変化していき,それが時間の不可逆性の起源だそうだ.
ところでパイこね変換の話はよくプリゴジンも使っているのだが,彼はパイこね変換の場合は,無限の過去においても無限の未来においても平衡状態へ導き,熱力学第二法則は,それゆえ,選択則として働く,という話をしていたと思うのだが,その話との関連はどうなっているのかいまひとつわからなかった.
本当は統計力学の本だと思います
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